低屈折率ナノ粒子とは、屈折率の低いナノ粒子の総称である。ではどれくらいの屈折率を指すのかというと、高/低は相対的なものであるため明確な定義はない。
一般的には、光学樹脂の屈折率約1.5よりも低い屈折率のナノ粒子を指すことが多い。これは、現時点での低屈折率ナノ粒子の用途の多くが、光学樹脂や光学フィルム、コーティング剤等の屈折率調整用途だからである。
いろいろな低屈折率ナノ粒子
(1)空気を「複合化」したナノ粒子
屈折率が最も低いのは真空の屈折率1であるが、空気も屈折率約1.0003と低い。このため、空気を含んだナノ粒子が低屈折率ナノ粒子として提唱されてきた。
具体例として、ポーラスシリカナノ粒子や中空シリカナノ粒子があげられる。
(2)低屈折率材料を用いたナノ粒子
屈折率が低い材料としては、一般的にフッ化物(フッ化マグネシウム(屈折率:約1.38)、フッ化カルシウム(同:約1.40))があり、これらの材料をナノ粒子化することによって低屈折率ナノ粒子が得られている。
(3)低屈折率材料かつ空気を「複合化」したナノ粒子
さらに屈折率を低くするために、(2)の低屈折率材料を用い、(1)のようにポーラス状、中空状にした超低屈折率ナノ粒子が提唱されている。
具体的には、ポーラスフッ化マグネシウムナノ粒子や中空フッ化カルシウムナノ粒子がある。
ポーラスナノ粒子の屈折調節材としての課題、注意点
樹脂との複合化や、コーティング材として溶媒中に分散した際、ナノ粒子表面のポーラス開口部へポリマー分子や溶媒分子等が入り込み、所望の屈折率が得られない場合がある。
このため、ナノ粒子合成時におけるポーラス開口部の最適設計や適切な表面処理が必要となってくる。
また、樹脂の複合化プロセスや分散プロセス条件の最適化によって開口部への入り込みをある程度抑制することも重要である。
中空ナノ粒子の屈折調節材としての課題、注意点
中空ナノ粒子はポーラスナノ粒子と違って表面にポーラス開口部がないので、開口部への樹脂や溶媒の入り込みを心配しなくてよいが、樹脂や溶媒中に分散させる際、シェル部分が破壊されるおそれがある。この場合も、空気の入っているコア部分がなくなるため、所望の屈折率が得られなくなる。
シェルの破壊を回避するには、中空ナノ粒子にできる限り力がかからないようにして、樹脂や溶媒中に分散しなければならない。
低屈折率ナノ粒子の用途
主に光学部材として用いられる。ナノ粒子単独ではあまり用いられないが、樹脂やコーティング材の屈折率調整用フィラーとして用いられる。
・光学レンズ
・光学フィルム
・反射防止コーティング材
など。