名古屋大学の研究グループは、がんを見つけて破壊する機能をもつナノ粒子の簡易な合成方法を開発した。
がんを見つけて破壊するナノ粒子を開発
~試薬を混合するだけでナノ粒子の中空化とハイブリッド化を同時に達成~ [PDF]2016.12.16 名古屋大学プレスリリース
これによると、開発したナノ粒子の特徴として、
(1)がんを探し出して光らせることにより、がんの場所を知らせる(センサーとしての機能)
(2)がん細胞内に入り込み、細胞内の物質に反応してナノ粒子を崩壊させ、内包する抗がん剤を放出(ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)としての機能)
(3)患部への光照射により、ナノ粒子の崩壊、抗がん剤の放出が加速するとともに、一重項酸素(活性酸素の一種で強い酸化力を持つ)と熱を発生し、がん細胞を物理的に破壊(物理的ながん細胞破壊機能)
といった複数の機能を有するナノ粒子で、中空構造の有機無機ハイブリッドナノ粒子とのこと。
中空構造の空洞部に抗がん剤や、光増感剤を担持させることにより、がんの場所を光らせ、がん細胞の部分に特異的に抗がん剤を届けることができるようになる。
また、ナノ粒子はがん細胞内のグルタチオン(がん細胞内は濃度が高い)と反応し、崩壊することによって中に入っている薬剤を放出するため、がん細胞内での抗がん剤濃度を高く、それ以外の箇所での抗がん剤濃度を低くすることができる。このため、抗がん剤の効果向上、副作用の抑制が期待されている。
さらに、温熱療法のように、がん細胞を選択的に熱により物理的に破壊できる可能性があり、抗がん剤の効きにくい場合にも効果が期待できる。
こういった特徴を持つ中空型ナノ粒子が、比較的簡単な方法で合成できるようになったのは素晴らしいことである。今後はさらなる実用化に向けたがん治療法の研究や、がん以外の病気への応用などへの波及、一層の研究の進展が期待できる。