ナノ粒子とは、ナノメートル(百万分の1ミリメートル)オーダーのきわめて微小な粒子です。
素材をナノサイズ化することにより、同じ素材でも、表面効果や量子サイズ効果といった一般的なサイズの物質とは異なるさまざまな「機能」を発現できるため、幅広い産業分野への応用が期待されています。
通常は100nm(ナノメートル)以下の大きさの粒子を指す場合が多く、当研究会においても、粒子径が1~100nmの粒子をナノ粒子と定義し、研究対象としています。
ナノ粒子のサイズの目安
細かな粒子といえば、身近なもので花粉や小麦粉、片栗粉(でんぷん)などがあげられます。しかし、これらの粒子と比べても、ナノ粒子はずっと小さいサイズです。
例えば、スギ花粉のサイズは約30μm(=30,000nm)、小麦粉は20-150μm(=20,000-150,000nm)片栗粉は2-50μm(=2,000-50,000nm)なので、ナノ粒子(1-100nm)のサイズがずいぶん小さいことがわかります。
1,000,000nm(=1,000μm)(=1mm)
↑
粒子
↓
100,000nm(=100μm)
↑
微粒子
↓
100nm(=0.1μm)
↑
ナノ粒子、超微粒子
↓
1nm
↑
クラスター(数個から数百個程度の原子の集合体)
ナノ粒子はサイズでの定義となるため、構成物質は多岐に渡ります。
例えばナノ粒子を構成する物質が、
・金属の場合、金属ナノ粒子
(ex:金ナノ粒子、白金ナノ粒子、銀ナノ粒子、銅ナノ粒子、…)
・酸化物の場合、酸化物ナノ粒子
(ex:酸化鉄ナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、酸化珪素(シリカ)ナノ粒子、…)
・窒化物の場合、窒化物ナノ粒子
(ex:窒化珪素ナノ粒子、窒化アルミニウムナノ粒子、…)
・有機ポリマーの場合、ポリマーナノ粒子
(ex:ポリスチレンラテックスナノ粒子、アクリルナノ粒子、…)
などと呼ばれ、非常に多くの種類の「ナノ粒子」が存在しています。
そしてこれらの「ナノ粒子」は一般的な粒子と違い、その小ささゆえの「特別な性質(=機能)」を持っています。
ナノ粒子の「特別な性質」をうまく利用して、材料や工業製品の性能を飛躍的に向上させる研究が世界じゅうで進められています。
【補足】超微粒子とは
直径が0.1μm以下の極めて微細な微粒子。
0.1μm=100nmですので、ナノ粒子と同義とみてよいでしょう。
日本でナノ粒子の研究が本格的に始まった1980年代では、ナノ粒子(nanoparticles)という言葉はほとんど使われておらず、超微粒子(ultra fine particles)という表現が使われていました。
ではいつから「ナノ粒子」という言葉が使われだしたのでしょうか。研究会では、1990年代後半からという見解で一致しています。それまでは超微粒子で、1990年代後半からJournalで“nanoparticles”が使われはじめました。
急速に広まったのは2000年以降で、2000年に米国の当時のクリントン政権が国家政策(National Nanotechnology Initiative)としてナノテクノロジーに注力することが発表され、その中の“nanoparticles”が、日本でも「ナノ粒子」として報道され、一般の人に「ナノ粒子」として認知されるようになりました。