ペロブスカイト太陽電池は、2009年に桐蔭横浜大学の宮坂教授によって提唱された、ペロブスカイト型半導体を光吸収材に使った(色素増感型の)太陽電池です。
従来の色素増感太陽電池と違ってペロブスカイト太陽電池は、色素の代わりにペロブスカイト型半導体で光エネルギーを吸収し、ペロブスカイトのところで電荷分離もします。これまでの色素増感太陽電池では、色素で太陽光から光エネルギーを吸収し、酸化チタンで電荷分離を行っていましたが、ペロブスカイトで自己完結するところが大きく異なる点です。
ペロブスカイト太陽電池の特徴
高効率
2009年に最初に発表されたペロブスカイト太陽電池の変換効率は3.9%でしたが、以降、世界中で部材や構造最適化の研究がさかんに行われ、高効率化が著しく進んでいます。直近では2017年12月に韓国化学研究院(KRICT)の研究チームが変換効率22.7%を記録し、現在主流のシリコン型太陽電池の効率に近づいている状況です。
変換効率の理論限界は30%程度と言われていますが、シリコン型太陽電池では利用できなかった高エネルギー電荷(ホットキャリア)をうまく取り出すことができれば、効率を2倍の60%程度まで高めることができるだろうとの試算もあり、まだまだ効率向上の余地はありそうです。
製造容易性(低コスト)
ペロブスカイト太陽電池は常圧下のウェットプロセスで作製でき、真空設備を必要としないため、比較的製造が容易です。
材料の最適化状況にもよりますが、通常何百℃のような高温の処理すら不要なため、樹脂フィルムのような基材の上に印刷法で連続的にRoll to Rollで大量生産できる可能性があります。
このため、従来のシリコン太陽電池に比べて製造コストを著しく下げることができるでしょう。
透明・軽量・曲げられる
ペロブスカイト太陽電池は樹脂フィルムのような薄くて軽い基材上にナノメートルオーダーの部材を薄く塗ってフィルム状の太陽電池にすることが可能です。また、薄膜状で部分的に光を透過するため、透明性が要求される用途でも使用できるでしょう。
フィルム状の太陽電池は、薄くて軽量で曲げられるため、例えば、建物の屋根や壁に粘着テープ等で簡単に貼り付けたり、車のボンネットや屋根の曲面部分にぴったり貼り付けて使うことができるでしょう。軽いので、屋根や壁への負担が小さく、車の燃費悪化も抑制できる利点があります。
また、透明性を生かして、ベランダの採光壁や、窓ガラス、自動車の後部座席のガラスなどにも使えるようになるかもしれません。
このように、ペロブスカイト太陽電池の実用化がすすめば、これまでのシリコン太陽電池が使えなかった場所にもペロブスカイト太陽電池が使え、今以上に街じゅうに太陽電池を普及していくでしょう。
また、寿命が来た場合、ペロブスカイト太陽電池なら、シールのように簡単にはがして貼りかえることができるようになるでしょう。現在使用されている部材には、環境的に配慮を要する部材が含まれていますが、この点をクリアできれば大きく普及が進展する可能性があります。