全固体電池とは、電解質に固体電解質を用いた電池のことである。
従来のリチウムイオン電池は、電解質に液体(有機系)を用いているため、下記のような課題が残されているが、電解質を固体にすることにより、これらの課題をすべて解決できる可能性がある。そのため最近注目が集まっており、急ピッチで開発が進められている。
従来型リチウムイオン電池の一般的課題
(1)安全性のさらなる確保
電解質が液体で燃えやすい物質のため、予期しないトラブル等によるリチウムイオン電池の発火事故が発生している。そのためメーカーは何重にも安全対策を実施しているが、根本的対策には、より安全な電解質の開発が待ち望まれている。
(2)セル組立時の複雑さの解消
電解質が液体だと製造時に扱いにくいだけでなく、セル自体の構造も複雑化する。例えば、液体をセル化するには液体を閉じ込める袋や囲いなどが必要で、その分電池の構造も複雑になってくる。また、万一のことを想定した安全対策のために、さらにセルの構造や製造工程が複雑になってくる。
(3)セルの高集積化
リチウムイオン電池の大きな特徴の一つに、部材のエネルギー密度が高く、軽量であることが挙げられる。このエネルギー密度の高さを最大限活用するには、セルの高集積化が必要である。しかしながら、電解質が液体ゆえにセルが袋や囲いで覆われており、高集積化が難しい状況となっている。
そこで、電解質を液体でなく固体(しかも、燃えにくい固体物質)にすれば、電池を構成する部材(電極(正極・負極)、電解質)すべてを固体にできる。
そうすると、電解質が漏れたり、燃えたりせず、電池の安全性を高くすることができる。また、固体物質だとセルを覆っていた袋や囲いが要らず、その分スペースを減らすことができる。セルの構造自体もシンプルにでき、積層化やシート化しやすく高集積化も容易になるだろうという発想である。
正極、負極、固体電解質すべてをナノ粒子化して、印刷法により全固体電池を大量生産するのも面白いかもしれない。容量が小さくても安価に大量に印刷法で2次電池を作ることができれば、IoT時代に対応した電池の大量供給ができるようになるかもしれない。
課題は、そういう固体電解質の候補がまだ少なく、あってもまだ開発段階ということ。また、これまでリチウムイオン有機液体に最適化していた正極、負極材料やセル構造も、固体電解質に合わせて最適化しなければならないという点。
しかし、最近になって固体電解質の開発は急速に進んでおり、実用化に近づいてきている。
電極材料の最適化も、考えようによっては今まで以上に良いものをつくるチャンスである。全固体電池の電極材料に、資源も豊富で安価な材料が使われるようになれば、電池材料の資源不足を回避し、電気自動車の普及も加速するだろう。
また、セル構造も、前述の印刷法など、これまでに液体の電解質ではできなかった方法が使えるようになれば、より簡単に、より安価に電池を製造できる可能性を秘めている。
全固体電池は将来、スマートフォンやPCなどのモバイル電子機器、電気自動車やハイブリットカー、航空機など、これまでリチウムイオン電池が使われていたところを徐々に置き換えていくであろう。
また、フィルム電池等の新しい電池形態を提供し、それによって新たな電池の使われ方をも創出する可能性を持つ、イノベーティブな電池だといえよう。