早稲田バイオサイエンス研究所(WABIOS)の研究グループは、筋肉細胞内に取り込まれたナノ粒子に近赤外光を当てることにより、骨格筋の収縮をワイヤレスに誘導する新手法を開発した。イタリア技術研究所、シンガポール国立大学との共同研究の成果。
2017.3.7 早稲田大学ニュースリリース
それによると、開発したナノ粒子は、直径約100nmのシリカ粒子の表面に10nm程度の金がコーティングされた、コアシェル構造を持つナノ粒子。
このコアシェルナノ粒子に近赤外光を当てると、表面の金が近赤外光をとらえ、効率よく熱に変換される。筋肉細胞組織内にこのナノ粒子を局所的に配置させると、局所的に発熱、筋肉細胞を刺激することができる。
近赤外光は、遠赤外光と違って水に対する透過率が高く、生体組織の水分による吸収が少ないため、生体内の奥深くまで入り込んで選択的に刺激を与えることができる。
これまで、筋肉細胞を刺激する方法として、電気刺激が広く用いられてきた。
電気刺激は効果も大きいが、電極周囲の電場が不均一であったり、培養液の成分によっては電気分解の影響が懸念される。
生体内の通常の筋肉収縮は、電気化学的なメカニズムで、カルシウムイオンが移動し電位が変動することによって収縮が起こる。今回の研究成果では、カルシウムイオン濃度の変化が見られないことから、熱刺激によって収縮が起こっているとみられたいへん興味深い。