高熱伝導ナノ粒子材料

高熱伝導ナノ粒子
(High thermal conductive nanoparticles)

電子デバイスの放熱ソリューションに対する要求は年々高まってきている。例えばスマートフォンなどに代表される小型で高密度の電子機器に対する放熱や、高輝度LED照明の放熱、電気自動車やソーラーパネルなどに用いられる大電力用半導体(パワーデバイス)の放熱などがあげられる。

放熱の手段としてはいろいろあるが、昔から、熱伝導率の高い材料の熱伝導によって、発熱部位から熱を移動させる方法がよく用いられている。例えば、ノートPCのプロセッサー周辺に見られるヒートシンクや熱伝導シートがその代表的なものである。

熱伝導の高い材料としては、昔から金属が知られている。なかでも銀や銅の熱伝導率が高く、アルミニウムは銀や銅の約半分、鉄は約1/4である。一般的なプラスチックは、金属と比べて極端に熱伝導率が低く、前述の銀や銅の1/100以下と熱を伝えにくい。そのため、プラスチック材料を熱伝導材料として使いたい場合は、熱伝導率の高い粒子をフィラーとして複合化する必要がでてくる。

熱伝導率の高いフィラー候補としてカーボンナノチューブ(CNT)が挙げられる。CNTは、前述の銀や銅の熱伝導率の約10倍と熱伝導率が高く、樹脂と複合化して樹脂の熱伝導率を飛躍的に向上させることができる。

CNTは導電性物質であるため、絶縁性が要求される熱伝導材料としてはCNTは不向きである。このため、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(SiC)、酸化アルミニウム(アルミナ)といった無機材料が用いられる。いずれも銀や銅の熱伝導率よりは低いが、絶縁性が高く熱伝導性に優れた材料として熱伝導材料、放熱材料によく使われている。

ちなみに、絶縁性物質で熱伝導率の高い物質としてはダイヤモンドがある。銀や銅の約5倍の熱伝導率だが、コストが高いために使いにくい。

(高熱伝導)
カーボンナノチューブ
ダイヤモンド


窒化アルミニウム

窒化ケイ素
酸化アルミニウム
ポリエチレン
(低熱伝導)

高熱伝導ナノ粒子の樹脂との複合化における課題

高熱伝導ナノ粒子を樹脂に混合すると、分散性の関係で熱伝導のパス(熱が伝わる経路)が形成されにくくなる。またうまく形成された場合でも、ナノ粒子-ナノ粒子間での熱抵抗部位が多数発生することにより、熱伝導率が上がりにくい。そのため、いかにナノ粒子-ナノ粒子間での熱抵抗部位の発生をなくしていくかが重要になってくる。

このため、ナノワイヤーなどのアスペクト比の高い高熱伝導ナノ粒子や、平板状のナノ粒子が提唱されている。

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