マイクロプラスチック、ナノプラスチックの問題点と対策

近年、マイクロプラスチックナノプラスチックの生物への影響が問題となっている。

プランクトンや海洋生物の体内から、これらの微小なプラスチックが検出されており、食物連鎖による濃縮の結果、魚にマイクロプラスチックが蓄積され、魚介類を食べる私たちも知らず知らずのうちに微小プラスチックを取り込んでいるのではないかとの懸念が出始めている。

マイクロプラスチック、ナノプラスチックとは

非常に細かいサイズのプラスチックの総称。

マイクロプラスチック(MP)とナノプラスチック(NP)は、大きさで分けられ、

・MP:100nm~5mm
・NP:100nm以下

が大きさの目安とされている。

主な発生源は不適切に処理されたプラスチックごみ。川に不法投棄されたプラスチックは、海まで流され、海洋上を浮遊する。長時間太陽光にさらされ、波にもまれながら風化して細かくなり、マイクロプラスチックへと変化する。

マイクロプラスチック、ナノプラスチックの何が問題なのか

一つ目の問題は、海水中の有害物質がマイクロプラスチック、ナノプラスチックの存在によって海洋生物に取り込まれやすくなるということ。

海を漂うプラスチックは、海水中に極微量に存在するPCBなどの難分解性の有害物質を吸着しやすく、プラスチック表面で有害物質の蓄積がおこりやすい。特に粒子径が小さいマイクロプラスチックやナノプラスチックは表面積の占める割合が大きいため、プラスチック重量当たりの有害物質の吸着量は多くなる。

特にナノプラスチックは、粒子径が極めて小さいため食物連鎖の下位に位置するプランクトンに摂取されやすく、そのプランクトンを魚が食べることによってPCBなどの有害物質の濃縮が食物連鎖の過程で起こりやすくなる。

そして食物連鎖の上位にいる私たちが、これらの魚を食べることになる。

もう一つの問題点は、プラスチック自体に含まれている化学物質が、マイクロプラスチック、ナノプラスチックとして生体内にとりこまれた後、体内に放出される懸念がある点。

プラスチックの種類によって異なるが、プラスチックの中には、性能改善のためのいくつかの化学物質(添加剤)が含まれている。例えば、耐候性を上げるための紫外線防止剤や酸化防止剤、着色のための顔料、柔らかさを調整するための可塑剤などである。これらの添加剤の中には、過去に有害性が認められたため使用が禁止になった化学物質があり、昔これらの有害な化学物質を使用して生産されたプラスチックが長い年月を経て海洋中を漂い、マイクロプラスチックやナノプラスチックになっている可能性がある。

通常の使用であれば有害物質の染み出しの問題がなくても、細かくなり表面積が大きくなるとプラスチック中の添加物の溶出が大きくなるため、添加物に有害物質を使用していた際の影響が大きくなってしまう。また、ナノ粒子のように微細なものは、細胞膜の隙間をすり抜けて、細胞内に浸入する可能性もあるために注意が必要である。

今後の対策

マイクロプラスチック、ナノプラスチックの影響調査

マイクロプラスチック、ナノプラスチックの影響は、まだ不明な点が多く、さらなる調査が必要である。

・どの海洋生物にどれくらいの量のナノプラスチック、マイクロプラスチックが含まれているのか?
・場所によってどれくらいの違いがあるのか?
・吸着している有害物質の種類と量はどれくらいか?
・生体への影響はあるのか?あるとすればどの程度か?

これらの調査を世界中で進めなければならない。

プラスチックごみの海洋への放出抑制

影響調査と同時に、これ以上海洋へ新たなプラスチックごみが放出されないようにすることが必要である。

ヨーロッパを中心に、微小なプラスチック粒子(マイクロビーズ)の使用を制限する動きが出はじめている。マイクロビーズは歯磨き粉やスクラブ効果のある洗顔料など、身近な製品にも使われている工業材料である。

このマイクロビーズは、非常に小さいため下水処理場では処理しきれず河川に流出するのではないかと心配されており、英国やフランスなどですでに規制が始まっている。

この「小さいプラスチックごみ」問題、世界的に関心が高まってきている状況である。

世界の国々が連携して、プラスチックごみの適切な廃棄・リサイクルを進め、不法投棄を撲滅しなければならない。

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