量子ドットとは、ナノ粒子の中でも粒子サイズが特に小さい微細なナノ粒子(およそ10nm以下)です。10nm以下という小さな空間内に電子が閉じ込められるために、ナノ粒子の中の電子の振る舞いが変わってきます。その結果、ナノ粒子では、バルク(固まり)やミクロンオーダーの粒子とは異なる性質が見られるようになります。
つまり、粒子サイズをうまくコントロールすることによって、同じ物質でも性質を変えることができるようになるのです。
例えば、半導体量子ドット蛍光体の場合、粒子サイズによって発光波長を任意にコントロールできるため、バルクの蛍光体では難しかった細やかな色の調整が可能になります。
このため液晶(LCD)ディスプレイのバックライトに量子ドットを使用すると、色の表現範囲が広がり、自然の色により近づけることが期待されています。
液晶ディスプレイのバックライトでは、一般的には青色LEDの青色光を蛍光体によって白色光を得ています。特に色再現性が要求されるテレビやPCのディスプレイなどは、黄色や赤色の蛍光体をうまく組み合わせて、より自然な白色に近づけています。これらの蛍光体に量子ドットを使用すると、発光波長を精密にコントロールできるため、さらに理想的な白色のスペクトルにすることが可能になります。
量子ドットは、バルクの蛍光体に比べて劣化しやすいという課題があったため、実用化までには高いハードルがありましたが、材料研究者やメーカーにより開発がすすめられ、各社から量子ドット液晶(QLED-4K,8K TV)テレビや量子ドット液晶ディスプレイが上市されはじめています。