ナノ粒子はミクロンオーダーの微粒子と比べて表面積が大きく凝集しやすい。いったん凝集してしまうと、ナノ粒子を一次粒径まで再分散させるのは容易ではなく、さまざまな分散プロセスが提唱されてきた。ここでは、ナノ粒子の分散に使われている代表的な分散プロセスを紹介する。
化学的プロセス
酸化物ナノ粒子などの親水性ナノ粒子は、floccurate(弱い結合でのナノ粒子集合)状態の場合、pHを変化させることにより、ナノ粒子の表面電位を増大させて再分散することができる。
しかし、aggregate(ナノ粒子どうしが強固に結合した)状態では、ナノ粒子凝集体を再分散させるのは簡単ではなく、後述するような機械的プロセスで凝集体を機械的(物理的)に引き離して分散させる。
機械的プロセス
ビーズミル法
溶媒中に凝集ナノ粒子とセラミック製のビーズを入れてかくはんすると、ビーズが凝集ナノ粒子に衝突し、その衝撃で凝集がほぐれていく。
幅広い粒子種や溶媒に使用できるため汎用性が高く、代表的なナノ粒子分散プロセスである。
ナノ粒子分散では、ビーズ径は50μm以下の小さなものがよく用いられる。
ビーズが大きいと、凝集をほぐすだけでなくナノ粒子自体を破壊してしまうためだが、ビーズが小さすぎても凝集をほぐす効果が小さくなるため、適切なビーズのサイズ選定が必要になってくる。
また、ビーズミル法の課題として、ビーズの摩耗によるコンタミネーションがある程度は避けられない点がある。
このため、ナノ粒子の分散液の使用用途に応じた、(混入しても影響の少ない)ビーズの種類選定も重要である。
超音波照射法
超音波照射による物理的エネルギーの付与もナノ粒子の分散に用いられる。
超音波は液中の凝集物に対しキャビテーションという衝撃力を与えるため、凝集をほぐす効果があるといわれている。また、超音波による振動加速度や直進流によってほぐされたナノ粒子が液中に拡散し、分散が徐々に進んでいくと考えられている。