ナノ粒子の合成法

ナノ粒子の合成方法としては、大まかにブレークダウンプロセスとビルドアッププロセスに分けられる。

ブレークダウンプロセス

ブレークダウンプロセスとは、大きめの粒子やかたまりを機械的に粉砕し、より小さな粒子を得るプロセスである。

製造装置としては、ジェットミル、ボールミル、遊星ミル、ビーズミル等があげられる。これらの 装置は古くから粉体工学の研究者や機械装置メーカー、粉体工業メーカー等によって開発され、材料、化学、食品メーカー等で広く用いられてきた。

これまで上記装置の多くは、ミクロンオーダーの粒子サイズまでしか対応していないものが多かったが、ナノ粒子の工業的なニーズの増大にともない、ナノ粒子の製造に最適化した装置が各社から開発されはじめている。

ブレークダウンプロセスでは製造中に、機械的、熱エネルギー等が加わるため、これらの影響に問題がある材料には使用できない。また、装置の摩耗等に伴う不純物の混入に注意が必要である。

簡便に大量にナノ粒子を製造できる方法として、広く工業的に用いられている。

ビルドアッププロセス

ビルドアッププロセスは、ナノ粒子を原料から物理・化学反応等を利用してこれまでに種々の方法が提唱されており、気相法、液相法、固相法に分類される。

気相法によるナノ粒子の合成

気相法は気相中でナノ粒子を合成するプロセスの総称で、気相中での化学反応を伴うCVDプロセスと、蒸気の凝縮・液化を利用するPVDプロセスに大きく分けられる。

化学気相成長法(CVDプロセス)

熱CVD法

原料ガスを熱により分解させたり、化学反応を引き起こすことによって、ナノ粒子を合成する。比較的高純度で結晶性の高いナノ粒子が作成できる。比較的シンプルな装置で製造できるが、原料ガスの取り扱いに注意を要するものが多い。

プラズマCVD法

原料のガスをプラズマ状態にして化学反応を促進し、ナノ粒子を合成する。熱CVDに比べて、電熱を使わず比較的低い温度で反応性を高くすることができる。マイクロ波や高周波等のプラズマ発生源が必要で、装置が複雑になるが、熱CVDでナノ粒子化しにくい原料も使える場合がある。

火炎法

熱CVD法、プラズマ法同様、原料ガスの分解や化学反応によってナノ粒子を合成する手法で、反応促進のためのトリガーに火炎を使用する。

物理気相成長法(PVDプロセス)

粒子原料を加熱等により蒸発させ、その後蒸気を冷却すると、微小な原料液滴が気相中に形成され、ナノ粒子が得られる。

液相法によるナノ粒子の合成

<物理エネルギー照射によるナノ粒子作成>

噴霧熱分解法

粒子原料を水などの溶媒に溶解し、高温の気流中にアトマイザーなどを用いて噴霧すると、液滴の溶媒は蒸発し、粒子成分の析出と熱分解が起こり、粒子が生成する。

レーザー分解法(レーザーアブレーション)

溶媒中などの粒子原料にレーザーを照射し、局所的に生成される高温・高圧の反応場でナノ粒子を合成する方法。

超音波法

レーザー分解法同様に、溶媒中の粒子原料に超音波を照射し、局所的に生成される高温・高圧の反応場でナノ粒子を合成する。

<化学反応によるナノ粒子作成>

ゾルゲル法

金属アルコキシドの加水分解、重縮合により、金属酸化物ナノ粒子を合成することができる。

ゾルゲル法により得られる粒子としては、シリカ微粒子が有名である。Siアルコキシドから非晶質のシリカ粒子を合成する方法1)が古くから知られており、この方法を応用してさまざまなナノ粒子の作成方法が研究されてきた。

ゾルゲル法では、アルコキシドの金属種を変えることによって、得られる酸化物ナノ粒子の金属種を容易に変えることができる。また、アルコキシドの種類や水の量、溶媒、触媒種などを変えることにより、反応を制御し、ナノ粒子の粒子径をコントロールすることができる。

1) Wernr Stober, Arthor Fink and Ernst Bohn: “Controlled growth of monodisperse silica spheres in the micron size range” J. Colloid Interface Sci., 26, 1 (1968) Pages 62-69.

液相還元法

液相還元法は、金属ナノ粒子の作成に古くから用いられてきた手法である。溶媒中の金属イオンを還元剤などで還元することにより、金属ナノ粒子を合成する。金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)などの貴金属ナノ粒子が製造されている。

最近では、生成後のナノ粒子の酸化を抑制する方法が見いだされ、銅(Cu)ナノ粒子の製造にも応用されている。

ソルボサーマル法

高温・高圧の溶媒を用いてナノ粒子を合成する方法。溶媒の代表例として、水やエチレングリコールがあげられ、溶媒が水の場合「水熱合成法、水熱法」、エチレングリコールの場合「グリコサーマル法」と呼ばれている。

ソルボサーマル法では、高温・高圧状態の溶媒をナノ粒子の合成に使用するため、通常の合成条件では得られないナノ粒子も合成できる場合がある。特に、超臨界状態のような液体と気体の性質を持つ特殊な条件下でのナノ粒子合成が盛んに研究されている。

固相法によるナノ粒子の合成

固相熱分解法

金属塩や金属錯体などのナノ粒子の前駆体を加熱し、熱分解することにより金属ナノ粒子を合成する。

結晶性に優れたナノ粒子を合成できる反面、生成したナノ粒子は通常凝集状態であることが多く、のちに分散処理が必要となってくることが多い。

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